読み逃げ問題

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SNSにおける、所謂マイページに他人がアクセスしたときに残る足跡(アクセス履歴みたいなもの)を見て、アクセスしたくせに何で一言挨拶もしないんだ!と憤る人たちの話。件の騒ぎは結局「釣りだろwwww引っかかった奴アホス^^」なんて自己啓示にも程がある主張をする者が出てきたところで落ち着き始めたようだけど、やはり「素通り」を気にする人はいるみたい。
「素通り」問題について、多くの人はネット利用の熟練度によるギャップで起こる現象だと分析した。ホームページやBlogを運営した経験や、掲示板で莫迦な煽り合いをやったことのある人なら、自分が他人に対する興味がびっくりするほど冷静なのと同じくらい、他人も自分に対してそれほど興味を持っていないということを理解している。なので、いちいち足跡やカウンターの回る数に神経質にならないし、自信を持って書いた記事に対しコメントがもらえなかったとしても「そういうものだ」と達観できる。恐らくほとんどの人がこのように考えた筈だ。
サテ、時は10年近く前に戻り、まだISDNやテレホタイムなどという言葉が一般的であった時代の話をしよう。当時はWinny初めとするP2Pソフトなど存在しなかった時代であり、そういった暗い好奇心を満たす為に皆回りくどいことをしていた。今では死後とも言えるアングラサイトの存在だ。
アングラサイト管理人は、例えばアーティストの楽曲や高額ソフトウェアを"お上"にバレないよう様々な手を使ってアップロードした。彼らの動機は、情報の共有化とか高すぎる価格設定をするAd○beへの意趣返しだとかなんとか言ってた様な気がするが、つまるところ訪問者からスゲーと思われたいという一点に尽きる。彼らは勝手にアップロードし誰でもダウンロードできるような状態にしていた。しかし時間が経つにつれ、どこからともなく「ダウンロードしたら必ずお礼を言うように」と自分勝手な主張が生まれ始めた。「管理人は大変な苦労とリスクを抱えてファイルをアップしているのだ。だからお礼を言わないのは礼に反するし管理人もやる気を無くす」といった具合が彼らの言い分だ。冷静に考えればおかしな話なのだが、閲覧者側もそれを良しと思い込み、「お礼」をしない者(DOM:ダウンロードオンリーメンバー)を軽蔑する風潮が広がった。お礼コメントを書き込まないとダウンロードできない、などというアップローダーまで誕生した。
彼らは間違いなく、当時のインターネットハードユーザーであると言えるが、そのハードユーザーが「素通り」に敏感な時代があったのだ。
ただ、時代と共に回線速度はどんどん向上していった。数十分かけてたった数メガの分割ファイルがダウンロードされてくるのをのんびり眺めている時代ではなくなった。すばやくWebを辿って新しい情報を手に入れなければ話題についていけないのに、わざわざコメントを残すなど面倒で仕方が無い。そう思う人は「素通り」文化を無駄と考えるだろう。反対に管理人同士のコミュニティを重視する人は、アナログな対話も意味があると感じるのだろう。それぞれが両極端に文化発達してしまったので、いざぶつかった時にすんげー奇妙に思えてしまうのは当然。つまり、ネットの熟練度など関係なく価値観の問題なのだ。
今はGoogleのやり方が主流だが、将来mixiを超える人との繋がりに特化するようなサービスが誕生し、人類がどっぷりハマる世界になれば覆るかもしれない。ただ、正直なところ道ですれちがっただけで大層な挨拶と相手への気遣いの言葉を述べなければならない文化というのは鬱陶しくて仕方が無い。Googleは是非頑張ってくれ。