アサシンクリードの映画的演出

アサシンクリードとは先週末に発売したゲーム。
プレイヤーはエルサレムやダマスカスといった歴史の舞台を暗躍する暗殺者となる。アサシンギルドより下される依頼を完遂すればゲームクリアだ。

本作は、所謂ステルスアクションゲームの新作である。
すんげー奇麗な画質とファンタジーチックな舞台設定でメタルギアができる的ものと想像していただければ良いだろう。
非常に詳細なアクションパターンを限られたボタンで駆使できるようになっており、馴れるとすんげーカッコイイ動きができる。
町に住む人々もきちんと個性を持って行動している。
走ってぶつかると罵声を飛ばし、ムカッとして殴るとヘタレなら一目散に逃げていく。
戯れに家屋の屋根をヤマカシのように飛び移ってると「何やってんだアイツ」「どうかしてるぜ」と住人が野次を飛ばす。注目を浴びると警備の騎士が何事かと警戒ゲージを上昇させる。実にこの現場に存在していると感じさせられて気持ちが良い。
ゲームとしてはとても良くできてるし純粋に面白いなあと思える作品だ。


サテ、遊びは面白いのだが本作はゲームらしからぬ妙な演出があり、そいつがどーも鼻につくのだ。
エストなりミッションなり何か出された課題をクリアした時に、ゲームではリザルト画面に移行するのが普通である。クリアタイムが何分で、何人殺しただとかそーいうやつだ。そして「次のミッション」なりを選択すると速やかに次のステージが開始する。
その間の主人公の日常生活や便所でクソ垂れたなんかのイベントは省略される。
アサシクリードの場合、時間軸の移動の際は「時間をスキップします」的な演出が施される。
本作の設定上、プレイしている舞台は(本当の)主人公がマシンを通して見ている仮想世界、という設定がある。つまり仮想世界の中の人が見ている仮想世界を遊んでいるということらしい。
場面の転機が訪れると、攻殻機動隊というかマトリックスというかいかにもな画面演出とともに背景がぐにゃりと歪み、時間遷移する旨のメッセージダイアログが表示される。画面中央イにはタイムマシンに乗るノビタよろしく主人公キャラが立っている。そいつを操作することもできる。
この手の手法は、主人公の記憶がフラッシュバックしてその時間の描写が始まるなど、映像作品ではありふれた演出なんだと思う。ここで場面が転換しますよと宣言をしているのだ。
ただゲームにおいてはどうなのだろうか。
正直、自分はこの画面がでる度に「現実」に戻されて少々イラッとしてしまった。せっかくゲーム世界の中に入り込んで「ウッヒョー、俺スゲェ飛んでる」といい気になっているのに無理矢理ストーリーの本筋に戻されてしまうのだ。少し前まで主人公のアサシンの気分だったのが、いやおうがなしに視聴者の立場を自覚させられてしまう。
ゲームプレイヤーとしては少々寂しいことだ。
さんざん苦労してクリアしたのに、やって当たり前のように「時間をスキップします」とアナウンスされ、次の瞬間にはこれまでと全く違う風景が広がっている。映画なら頭の切り替えもすんなりできるのだが、何分感情移入が深いため前触れの無い場面転機は面食らってしまうのだ。
これなら、おめーのプレイはランクFマイナスだぜと採点されるほうがマシな気がした。
映画としてはエンドロールまで到達することが一つの区切りのだろう。ゲームはステージ1が終わり、ステージ2に進むというのがある意味すり込まれた自分の区切りどころになってしまっているのだ。
そういう意味で「STAGE2 ダマスカス」と出てくれた方がおいらはホッとできたかもしれない。


世界観としては非常に明確になっている。主人公は機械につながれてこんな映像を見ているんだろうなーとは思う。ただ、おいらはこの「アサシンとシンクロしている主人公」とはシンクロできないんだよね。